インターネットのホームページ開設以降、さまざまなお問い合わせを頂きました。
その中で痛感するのは、業界の常識が、世間では非常識になっているのでは?
と思えるほど、私たちの知識・ノウハウが活かされていないという事実でした。
01 築炉ならではの技術(お客様の要望にお答えして)
上図のような形で、質問にお答えをしてきました。壁を煉瓦で積みあがる事は理解
出来ても特に、天井をどうするかという点で、皆さん悩まれるようですね。で「蓋」の
ような考えに行き着いてしまいます。何故、円形のアーチ天井があるのか。
ローマ時代から受け継がれて来た、先人の知恵は、現代においても、、物理的に
意味があればこそ
、生き続けているのです。要は、物理的な力をどう配分するか。
その上で、耐火物ならではの次の要素が重要になってくるのです。
02 耐火物は「動くこと」が前提の構造物
モルタルという言葉と並んで、最大の誤解は、耐火物は「動く」という概念です。
動く・・・熱膨張・収縮は、実は世の中のありとあらゆる構造物にも影響しては
いますが、耐火物は、300度〜1200度〜1600度という高温の中にあります。
通常の外気温の何十倍という熱のエネルギーの影響を受けるのです。
自分の窯は、ピザ程度だから・・・という方も見えるでしょう、しかし炎の焦点温度
はそれほど変わりません。熱カロリーが違うだけです。ですから、部分的には
熱の影響を強く受ける箇所があったりすると、逆にいびつな力がかかることさえ
考えられるのです。かかる力を、いかに平均的に拡散をして逃がすかが、次の
課題になるわけです。

セメントにも、耐火性のある、アルミナセメントという種類があります。では何故
一見、弱そうな粘土質の耐火モルタルが、今日まであるのか。理由はここに
あります。つまり、基本は煉瓦の構造、耐火物の構造で力を逃がすのであって
耐火モルタル=接着剤という考え方が間違いなのです。
勿論、耐火モルタルで煉瓦同士を張りつけていくのは、その通りです。ですが
モルタルは施工の過程で必要なのですが、最終的に出来上がった構造物が
物理的に理にかなっていないと崩落をします。何故なら、動くからです。
まるで接着剤のように四角の煉瓦をぺたぺた天井に配列されるという話を
聞いた事がありますが、火を入れれば確実に、どこかが落ちるでしょう。
落ちる場所は、いろんな力がかかってきた場所か、もっとも構造的に弱かった
場所だと思います。

実際に、相談を受ける際にポイントにするのは、お客様の窯のポイントが
接着を優先させても構わない構造物か、そうでないかというのが一つの判断
基準になり、熱エネルギーの影響が限定されそうであれば、アルミナセメント
系の目地材で、接着を優先させたりもします。ですが、条件が厳しくなると
どうしても違うお答えをしなくてはならなくなるのです。屋外のバーベキュー炉
くらいなら、それほど厳密に考えなくても。と思うわけです。でも皆さん、時々
ひび割れの入った、屋外のそういう設備を見た事はありませんか?それは
すなわち、かかる力の逃げ場がなかったのが、そうした結果を生み出すのです。
そういう物理的な作用があるとの前提で、安全・危険の判断をしてください。
屋外の場合は、さらに冬季の凍結によるひび割れの可能性もあるわけです。
03 力を分散させ、力を封じ込めること。通常の建築力学と違う点。
難しい話をしようとはしていません。上記を理解して頂いたうえでいくつかの
ポイントを押さえて頂ければよいのです。

耐火物は接着ではなく、構造の組み合わせで考える
かかる力を想定した上で、力の逃げ場を考える
力を逃がすだけでなく、構造物自体が崩落しないようにバックアップを取る
一例を紹介しましょう。図面の赤い部分は鉄の支柱です。矢印の方向にかかる
外向きの力に、対抗をします。さらに、その支柱を横方向の丸棒で結ぶことに
より、構造全体が崩れることを防いでいます。
写真は、ピザ窯の建築例です。全面開口部の上にやはりアングルが一本通って
いますが、図面と比較をすれば、力がかかるこの部分に補強を入れているのが
お分かりいただけるでしょうか。
ここは通し番号ページ03です