01 煉瓦の基本 日本工業規格(JIS規格)について
耐火煉瓦のお話をする前に、煉瓦の基本的なことをおさえておきましょう。
煉瓦にはJIS規格(日本工業規格)があります。まずこの統一規格の製品であるのか
ないのかによって、寸法や、品質等に大きな違いが生じます。簡単に言えば
「寸法の違う煉瓦がある」ということを、まず覚えてください。例えば今でも若干流通
する、耐火煉瓦の東並という規格と、JIS並では寸法が違います。ドイツ等、海外から
輸入されるものも、各国の規格があります。

その上で、このホームページでは、以降、JIS規格を基本に説明をしてまいります。
実は、大切な意味があります。JIS規格の認定を受けていない商品が流通している
からです。規格認定を受けていないから、ただちに全ての用途で駄目という意味では
ありません。が、いろんな意味で、製品の品質や性能に安定を求めるのなら、JIS規格
という、一つの物差しを使うことをお勧めしたいのです。

こんな実例があります。赤煉瓦で外壁を積んでいるときの事、材料が途中で足りなくなり
買える所で間に合わせたとします。ところが、その製品が規格外だったとしましょう。
同じ赤煉瓦なのに、寸法(長辺)が10ミリ違っていたことが実際にあります。
10ミリ寸法が違うということは、施工に致命的な支障をきたします。セメントで積むような
赤煉瓦の目地厚は7ミリから10ミリ程度なので、10ミリも違うと目地の調整が出来なく
なることだってあるのです。

上図は、JIS規格における、耐火煉瓦(断熱煉瓦)と赤煉瓦(普通煉瓦)の寸法です。
基本的な寸法を覚えて頂くのと同時に、世の中には、この規格でない煉瓦、規格に
忠実ではない製品があるということを、まずは知って頂きたいのです。

さらに付け加えれば、JIS規格に則るということは、寸法誤差だけでなく、耐圧強度や
曲げ強度、品質に、いろんな規定が存在し、それをクリアーしているという意味になります。
それが製品の値段の違いにもなったりするのですが、用途や施工をお考えの際、是非
参考にして頂きたいのです。精度が高い施工ほど、重要な要素になって来ます。
02 赤煉瓦(普通煉瓦)について(赤煉瓦だって焼いて作ったもの)
質問が結構、多く寄せられたのが、赤煉瓦には耐火度はありますか?という質問でした。
素性を知れば、答えは簡単です。耐火煉瓦も赤煉瓦も「焼物」程度の違いがあっても、
窯で焼かれた製品ですから、当然、ある程度の耐火度は有しています。
ただ、皆さんがよく勘違いされているのが、煉瓦の形状になっているもの全てが焼物じゃ
ない。
ってことで、その方が誤解が多いようです。特に最近は輸入煉瓦が市場に多く
出回っているので、よく問い合わせを受けますが、正直、返事に困ります。

例えば、歩道に敷設されている、カラーブロック。これは、コンクリート製品です。
コンクリートに着色がされているだけ、リサイクル製品をベースに作られているものも
ありますが、基本的に普通のコンクリートには耐火性はありませんから、当然、これらに
耐火度はありません。返事が出来ないという、輸入煉瓦は、1つ1つの素性が解らない
からです。多分、焼いて作ったと思われるものは、耐火度があるかも知れませんが、
保証できるお話は出来ないのです。

以降、ここで言う赤煉瓦は「焼物」として窯で焼かれたものを指して説明をします。
赤煉瓦も、種類があって、塩焼き煉瓦、焼き過ぎ煉瓦といった独特の風合いを持つ
ものがありますが、世の中の推移と共に、これら伝統的な製品を作る窯が次々
無くなっているので、今、欲しいと言っても入手困難になりつつあります。

赤煉瓦は一般市場でも多く、流通しており、皆さんも手軽に購入することが出来ると
思います。注意して頂くのは、前述の通り、値段の安さだけで、購入をすると、品質の
ばらつきで苦労をする施工の可能性もありますから、ご自分の用途に応じて判断を
して頂くのがよいと思います。何故、同じような煉瓦なのに値段が違うの?というのは
こういう理由があるのです。

私は業界人ですから、さらに細かな話をしますと、作られるメーカーによって、多少
質感が違います。見た目にも仕上げが美しく、目の細かいものや、表面はざらざら
してるけど、強度は逆にありそうだとか、結構、違うものなんですよ。煉瓦は集合体
で、シルエットを作りますから、1個・1個を見るだけでなく、その集合した姿を想像力
働かせて、施工前に想像するのも時に必要なのだと思います。均整の取れた煉瓦で
詰まれた壮大な外壁を見ると、思わず見とれて、美しいなあと思ってしまいます。
03 古煉瓦(アンティーク煉瓦)について
古煉瓦(アンティーク煉瓦)というのも最近は1つの製品市場を形成しています。当初は
国内から調達される、窯を解体した本物の煉瓦の再生品を指していましたが、今は、
輸入品と、最初からアンティーク風に作られた製品、そして、新品をわざと加工して風合
を出したものと、様々なものが出ています。全てが古煉瓦という訳ではありませんので、
これも耐火とか、本来の機能を期待する場合には、注意が必要です。
04 目地押しか、掻き目地か(セメントのモルタルを使った赤煉瓦の積み方)
セメントを使った、赤煉瓦等を積む際に、目地の仕上げを大きく2つに分類することが
出来ます。それは目地を細かなモルタルで込んで仕上げるか、逆に掻くかです。

目地を平坦に綺麗に仕上げるためには、例えば、砂でも細かな砂とセメントを混ぜ
合わせた粒子の細かなモルタルを作り、目地コテで押し付けるように上から仕上げの
こて塗りをしていきます。逆に、煉瓦のシルエットを強調したいときは、出来た目地を
やはり先の細い目地コテで、掻いて溝を深くします。趣が両者では全く違ってきます。
05 「モルタル」という言葉の勘違い(大変重要なことです)
 
皆さんは「モルタル」という概念をひょっとして間違えてはいませんか?
写真を良くご覧下さい。これが、耐火モルタルです。耐火モルタルという製品があります。
1997年ホームページ開設以降、一番、勘違いが多かったのが、これです。
土木・建設業界では、モルタルとは、セメント・砂・水をあわせて練ったものを指します。
築炉業界には、最初から、耐火モルタルという粘土質の製品が存在します。

私たちは、当たり前と思ってきましたが、実は、この大きな勘違いや誤解に気が付かない
まま、話を交わしている事が実に多かったので、改めて「基本編」として書くことにしました。
耐火モルタルの種類や、使い方は後で、詳しくお話しましょう。
まず、この基本中の基本なことをよく覚えておいてください。
06 ついでに、耐火煉瓦と赤煉瓦の施工の根本的な違いについて
モルタルという言葉に勘違いが生じていますから、当然に施工の方法にも勘違いが
発生します。赤煉瓦を土木・建設で言うセメントのモルタルで施工する場合には、
目地の馴染みをよくするために、赤煉瓦を水につけて施工する場合があります。
これには理由があって、煉瓦が乾いていると、目地のモルタルの水分が煉瓦に
吸われてしまい、目地が切れてしまうためです。

ところが・・・・耐火煉瓦を耐火モルタルで積むときは全く逆で、煉瓦に水を吸わせては
絶対にいけません!(まぁいろんな理屈を解っている方なら絶対とは言いません)
耐火モルタルは、それ自体が粘るので、煉瓦の表面にぴたっ!とくっつきます。
もし、練っても、バサバサで、煉瓦と馴染まない耐火モルタルがあったとしたら・・・・・
現実にそういう「不良品」があるので、ややこしいのですが、耐火モルタルで積むとき
には煉瓦には水を吸わせません。これが、セメント系で積む場合はまた別です。
ややこしいでしょうか(笑)よく理解出来ないときは、弊社にご相談下さい。

建材店に行きますと、メトロースという親和材を販売しています。例えばこれをセメント
系のモルタルに混ぜますと、セメントのモルタルに粘りが出ますから、それでも施工の
要領が変わって来ます。さらに、通常のポルトランドセメントには耐火性はありませんが
耐火度を持つ、アルミナセメントという、別な種類のセメントがあります。このアルミナ
セメントと耐火煉瓦の組み合わせは、あり得るので、その際には、その際の施工要領が
また別に考えられるわけです。ここが混乱するようでしたら、相談してください。

上記が整理できなくても、これは、どの場合にも「鉄則」になります。
耐火煉瓦を使い、耐火の目的で施工をしたら、使用するまえに乾燥を充分に行なうこと。
水分と火気が混在する環境下では、水分が熱せられて、水蒸気となり、場合によっては
水蒸気爆発を起こす可能性があるので、混在は避けることが大切なのです。特に耐火
煉瓦は吸水性があり、内部に水を蓄える性質があるので、注意が必要です。
07 やっと耐火煉瓦の本題に入れます(笑)
本当なら、弊社の業務で言えば、ここから書けば良いのです・・・・・が。
これだけ前置きが必要なのは、これだけ、誤解や勘違いが過去の問い合わせで実際に
あった・・・
ということなのです。弊社は耐火煉瓦の施工会社ですから、本来、赤煉瓦を
始めとする普通煉瓦を使用する、現場は主体ではありません。付帯的にそういう施工を
する場合はあります。勿論、普通煉瓦の工事もやらないわけではありません。
耐火煉瓦を使う我々築炉の世界と、土木・建設で使われる煉瓦には、理解していないと
互いの常識が非常識になっている場合が、あり、その事を理解して頂きたかったのです。
これが、耐火煉瓦です。01で述べましたように、寸法は230X114X65です。
材料の種類や、こまかな説明は、CHIKUROの館分室でも解説をしています。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~chikuro
その分室でも同じ質問をしていますが、左と右、値段で4倍近く差があります。
実はこのことを理解してもらうためにも、長い前置きが必要だったのです。
両者の違いは、耐火度の違いです。想定される耐温度が全然違うのです。
ガーデニングや、バーベキューくらいの使用で、高いほうを使う必要は全く
ありません。両者に寸法の歴然とした差もありません。形状的なJIS規格は
両者とも同じ、ただ、耐火度が違うだけなのです。(耐火度が違うことによって
付帯的に生じる、強度とか、製品安定性という違いはあります)

耐火煉瓦は工業規格製品です。JIS規格を理解して、使うということを言い換え
ますと、「まがいもの」「不良品」をつかまされない為の知識と言う事も言えます。
残念なのは、一般市場でよく見られる光景として、商品を扱う側も、買う側も
商品知識に乏しく、残念な売られ方をしているケースをよく見かけます。
赤煉瓦が10ミリも製品誤差がある商品を販売していたと前置きで述べましたが
耐火煉瓦も時々「規格外」「無刻印」の商品を販売しているのを見ることがあります。
それを、例えば弊社への問い合わせで「どこまで大丈夫ですか?」と聞かれても
お答えしようがありません。問題ないかもしれない、ひょっとして問題があるかも
知れない。ひび割れたようなものまで混在して売っているのを実際に見たことが
あるからです。JIS認定工場から出荷されるものには、あり得ない話なのです。

JIS規格外であれば、どんな基準でつくられているか、原料のコンテントも
わかりません。不良品は見ただけでは解らないのは、上記の写真だけでは見分け
がつかないのと同じなのです。承知で使われる場合は、お客様の判断になります。
実はプロの世界でも、「コストダウン」という言葉に代えて、こうした点に留意が
出来ず、施工を失敗する業界話もあります。寸法が揃わない煉瓦を使ったがために
火を入れたら天井が落ちたといった話です。

JIS規格であるか・ないか。当然両者にはコストによる価格差がありますので、用途
に応じてご判断を下さい。ちなみに当社は規格外の商品は基本的には扱いません。
(用途を限定した場合のみ、知恵を提供は出来るかもしれませんね)
08 標準形 規格異型 異型
 
 
皆さんが知っている耐火レンガが実はJIS規格で寸法や製品の特性が定められて
いる事をお話ししましたが、工事の効率化の為に、さらに最初から決まった形に
加工されたレンガがあります。大きく分けて「規格異型」と単なる「異型」があります。
前者はJISでやはり寸法が決められています。並型(標準形)では、どうしても施工に
難しい場所がある。とお悩みの方は、この異型を使ってみてはいかがですか。

半マス・ヨーカン・七五

これらは、製品として調達も出来ますが、殆どの場合、業界では現場で職人が
目きりたがねや、煉瓦カッターで加工して作ってしまう類の異型です。弊社でも
たまに在庫で用意する場合もありますが、殆どはカッターで並煉瓦を切って加工
します。(ご入用の際は、加工賃を頂きます)
半マス  並型の半分の大きさ
ヨーカン  やはり並型の半分の大きさだが、縦に半分に割ったもの
七五    レンガ職人はレンガを積むとき、丁度半分ずらして積むのではなく、
       四分の三(四分の一)ずらして積む事があります。左官屋さんと違う
       大きな特徴です。表と裏の目地が重ならないようにとかレンガ職人の
       知恵なのです。七五とは4分の3の大きさのレンガです。

規格異型・異型

JIS規格に寸法・形状が記載されていたり、業界内で定型があるものを指します。
業界内の定型を含めると相当数がありますが、弊社は常時在庫としては、以下の
ものを在庫として置くようにしています。
1丁半  並型の1.5倍長さ
2丁長  並型の2倍の長さ 開口部を作るときとか便利ですね。
Yセリ   114の長さの辺で角度がついているレンガ。Y1、Y2、Y3と角度毎に
Tセリ   230の長さの辺で角度がついているレンガ。T1、T2、T3と角度毎に
大判レンガ 規格にないレンガでどうしても寸法に合わせたレンガが欲しい際は、
      型を作り、注文する方法があります。そんな中でもメーカーによっては、
      独自の基準で型を持ち、準備をしている会社もあります。写真は4丁分の
      レンガをつないだものですが、必要があればご相談ください。
09 耐火煉瓦と断熱煉瓦
耐火を主に目的とするのが耐火煉瓦ですが、主に断熱を目的とする断熱煉瓦という
製品があり、両者の中間的な商品も存在します。このページは基本編ですから、
簡単な紹介に留めますが、窯や、炉を設計する場合の基本は「耐火と断熱」この
組み合わせになるということを覚えておいてください。

さらに、後で詳しく述べますが、耐酸・耐アルカリ・耐磨耗といったまた別の用途に
使われる煉瓦もあるということも知っておいてください。皆様がどこかで目にする
耐火煉瓦とは、全体の種類のほんの一部でしかないのです。私たち業界のプロが
存在する理由の一つが、その数多くある材料をいかに上図に効率よく組み合わせて
配置が出来るか、コストはどうか?という判断が出来ることにもあるのです。
10 耐火煉瓦の施工
築炉の煉瓦職人と、左官業の一番の違いは、煉瓦に対する知識と技術です。
一人前の職人は写真のように、いとも簡単に煉瓦を加工して現場で組み合わせ
図面を見ながら積んでいきます。目地割やゲージの作成、水平・垂直のレベル
調整、型枠作りや、組み付け、煉瓦職人ならではの技術職なのです。

09で述べましたように、一般市場で見る耐火物・耐火炉材は、ほんの一部です。
用途によって使い分けをしなければなりませんから、商品知識も持たねばなりません。
このホームページでは、そうした専門の技術を紹介しながら、なおかつ、出来ることは
自分でやってみたい方への支援も含めて、施工の方法についても紹介をしていきます。
ここは通し番号ページ01です